セルに入力する文字列の先頭に「'」を付加するとメールアドレスをリンクにさせないことができます。
Enterキーを押して入力内容を確定するとメールアドレスがリンクされてしまいます。
入力内容を確定してもメールアドレスにリンクは付与されません。
Excelのオプションの[文章校正]の[オートコレクト]の[入力フォーマット]の[インターネットとネットワークのアドレスをハイパーリンクに変更する]のチェックをはずすとメールやURLの自動リンクをオフにできます。
リボンの[ファイル]タブをクリックします。下図の画面が表示されます。左側のメニュー一覧の下部[オプション]メニューをクリックします。
Excelのオプションダイアログが表示されます。
左側のメニューから[文章校正]を選択します。下図の画面が表示されます。右側のエリアの[オートコレクトのオプション]セクションの[オートコレクトのオプション]ボタンをクリックします。
オートコレクトダイアログが表示されます。
[入力オートフォーマット]タブを選択します。
[入力中に自動で変更する項目]の[インターネットとネットワークのアドレスをハイパーリンクに変換する]のチェックボックスのチェックを外します。
以上のどちらかを実施することで、メールアドレスにリンクが張られなくなります。
月食の夜、東京湾をゆっくり旋回する遊覧飛行船〈ルミナス号〉の船底サロンには、無数の LED ライトが星座のように散りばめられていた。
窓越しに黒い水面を見下ろしながら、臨時乗務員のハルカは巨大なホログラム・ディスプレイを操作している。
任務は “空飛ぶ郵便局” と呼ばれるこの船で回収した投函メールの一覧を作成し、翌朝までに地上へ送信すること。
セル A 列には差出人名、B 列にはメールアドレス。アドレスを入力するたび、青く下線が引かれて勝手にハイパーリンクになる。
通信衛星経由の回線は混雑しがちで、リンクが混ざると文字化けし、最悪データが宙に消える。ハルカは溜息をついた。
「やっぱり今夜もか……」
曇った窓に映る自分の顔へぼやくと、背後で機械仕掛けの郵便鳩――真鍮の羽根を持つ小さなドローン――が
「クルル」と鳴いた。画面の中ではアドレスの下線が青い水滴のように揺れている。
ハルカは一拍置いて、工具箱から古びた手帳を取り出した。そこには先代オペレーターが残した走り書きがある。
「③しか勝たん、か」
船の振動で揺れるディスプレイに指先を滑らせ、設定画面の暗い迷路を潜る。
チェックボックスを外した瞬間、青い下線がスッと掻き消えた。まるで潮が引くように。試しに “aurora@ipentec.jp” と打つ。
リンクは生まれない。ハルカは小さくガッツポーズをつくった。
そのとき船内放送が流れ、コックピットのパイロットが囁くような声で告げた。
「お客様各位、まもなく月食が最大となり、通信が数分間不安定になります。ご注意ください。」
サロンの照明が赤く切り替わる。月が地球の影に入り、窓の外は漆黒と薔薇色がせめぎ合う。
ハルカは最後のセルにアドレスを入力し、保存を押した。エラーメッセージは出ない。ほっとした瞬間――
ピッ。
ディスプレイ中央に、たった今無効にしたはずの真新しいリンクが浮かび上がる。しかもアドレスは “haruka@ipentec.com”。
「え、私宛て…?」
リンクは一度瞬いてから、船内の照明と同期するように淡く脈動し始めた。郵便鳩が金属の羽根をぱたつかせ、リンクの上を飛び越える。
その影がリンクに重なった瞬間、画面から小さな稲妻が走り、鳩の尾羽が焦げた匂いを残して弾け飛ぶ。
ハルカは慌ててリンクを選択し、Delete キーを叩く――しかしカーソルは妙に重く、削除は効かない。
ディスプレイの表面が水面のように歪む。ページ内リンクではなく、現実へのリンクが開きはじめている。
やがてリンクはドアほどの大きさの青い円へと育ち、船底サロンに風が巻き起こる。
ハルカは咄嗟に工具箱を掴み、手帳の裏表紙に赤いインクで書かれた四つ目の走り書きを思い出した。