クラウドストレージ運用への移行のTips - メリット デメリット

クラウドストレージ運用への移行に関するTipsです。

概要

Microsoft Excelの新しいUIでは左上の自動保存スイッチが常に表示される動作になり、One Drive / SharePoint での利用をメインに考えられたUIに変わりました。 また、Googleスプレッドシートなど、クラウドでのファイル編集ソフトウェアもだいぶ普及しています。 ストレージのサービスもiCloud, One Drive, Google Drive など一般化してきており、そろそろクラウドのストレージサービスの導入も考えたほうが良い気がしてきました。 クラウドストレージサービスのメリットなどを考え、ストレージ移行を考えます。

クラウドストレージのメリット

クラウドストレージのメリットを挙げます。

モバイル対応

クラウドストレージのメリットとして、モバイル対応が挙げられます。外出先でスマートフォンを利用して簡単にクラウドストレージ内のファイルの閲覧や編集ができます。 Google DriveやShare Pointなど、専用のアプリがあり、ファイルの内容やポータルページも簡単に見えられます。
従来の設置型のサーバーの場合は、VPN等でサーバーに接続したのち、ファイルサーバー内のファイルにアクセスしますが、スマートフォンでの閲覧や編集の操作は不便です。

履歴が残る

クラウドストレージのファイルは編集履歴が残ります。ファイルの中身を削除した場合でも前の版からの復帰ができますし、 ファイルを削除してしまった場合でも、(1か月程度以内なら)ごみ箱から簡単に復元できます。
サーバー設置のクラウドストレージでは、履歴はバックアップのタイミングでしか残らないため、 バックアップが週一回の場合は、トラブルが起きると最悪、一週間ファイルが巻き戻ってしまうことがあります。

耐障害性 (ディザスタリカバリ)

クラウドストレージのファイルはデータセンタ内のストレージに保存されていますが、複数のリージョンや複数の装置に分散して保存されているため、 ディスク障害等でデータが消えてしまう可能性がかなり低いです。
サーバー設置型のストレージでもハードディスクが突然破損するケースは少ないですが、さらに安全性が高いです。また、サーバーのある建物が火災や地震などで被害を受けることもありますが、 データセンタであれば、災害での被害もかなり少ないかと予想されます。

認証

オンラインストレージのサービスではサービスのアカウントを利用しますが、2要素認証など認証方式が細かく設定できます。 また、Microsoft や Google のアカウントを利用する場合は他のサービスとの親和性も高いです。

メンテナンス時の情報確認

MASやファイルサーバー、DBをメンテナンスで電源オフにした際に、イントラネットのポータルは停止するため情報やファイルが一切見えなくなってしまします。 しかし、クラウドストレージであれば、サーバーメンテナンス時でもインターネット回線が接続されていれば、ファイルや情報を参照できます。

クラウドストレージのデメリット

クラウドストレージのデメリットを挙げます。

容量が少ない

サーバー設置型(NASやファイルサーバー)の場合は、接続したHDDの容量だけ利用できます。昨今では20TBのハードディスクも販売されているため、100TBのストレージも用意することができます。
一方で、クラウドストレージサービスの場合は、無料で使える容量は5GBから15GB程度です。有料のサービスを利用した場合、月額1,200円程度で1TBから2TBの容量が利用できますが、 NASやファイルサーバーのストレージに比べると容量は少ないです。

容量が高い

基本プランの容量で足りない場合は、ドライブの容量を追加できますが、ハードディスクに比べ料金が割高です。

通信速度

NASやファイルサーバーを利用する場合は、有線LANであれば1Gbps、設備を整えれば10Gbps、無線LANでも300Mbpsから1.2Gbpsででデータ転送できますが、 クラウドストレージの場合はインターネット接続のため、LANよりも低速になってしまいます。
容量が小さなファイルを少ない数扱うのであれば、ほとんど気になりませんが、ファイル数が多い場合や、サイズが大きいファイルを扱う場合は通信速度差が使用感に影響を与えます。

ローカルバックアップの容易性

クラウドストレージの場合はバックアップはほぼ不要ですが、何らかの場合にバックアップをする場合、すべてのファイルをダウンロードする必要があります。 NASやファイルサーバーの場合はディスクを接続すれば高速にファイルコピーでバックアップが取れます。

規約違反等でアカウントやファイルが削除される可能性

めったにないケースですが、利用規約違反等でクラウドストレージのアカウントが無効化されたり、ファイルが削除されてしまう場合があります。

データファイルが手元ある安心感

NASやファイルサーバーの場合はファイルが手元にある安心感があります。気分の問題ですが、あると思います。

メリット、デメリットまとめ

項目 NAS/ファイルサーバー クラウドストレージ
モバイルデバイス対応
編集履歴の保持
サーバーメンテ時(電源OFF)の利用 ×
認証(2要素認証など)
ストレージの容量 △(拡張は可能)
バックアップの容易さ
単価(ギガ単価)
通信速度
耐障害性(主に災害)
ハードウェア故障リスク
アカウント削除リスク
データが手元にある安心感(気分) ×

どう使い分けるか

先に紹介したメリット、デメリットを考えてどう使い分けるかを考えます。

帳票データ

Excelファイルなどの帳票系はファイルサイズも小さく、編集履歴が残るクラウドストレージのメリットを最大限受けられそうなため、クラウドストレージに配置するのがよさそうです。

プレゼンテーション(スライド)データ

PowerPointなどのスライド、プレゼンテーションのデータもファイルサイズがそれほど大きくないため、クラウドストレージに配置するのがよさそうです。

あまり見ないファイル

参照頻度の低いファイルはクラウドストレージの容量を圧迫させないよう、ファイルサーバーに格納しておくのがよさそうです。
しばらく時間が経過したら、ディスクバックアップし通電をやめ、コールドストレージとして保存しておくのがよさそうです。

ソースコード

プログラムのソースコード、HTMLファイルのコードはファイルサイズは小さいですが、ファイルの数が多いです。 また、通常はバージョン管理システムで管理することが、2020年代では一般的なため、ファイルサーバーやクラウドストレージに保存するのではなく、 バージョン管理システムに格納するのがよさそうです。
バージョン管理システムも、Azure DevOps Server などのサーバー設置型とGitHub, GitLab, Azure DevOps Services などのクラウドサービス型のものがあります。
現状では、クラウドサービス型のものを利用するケースが多いです。

(iPentecではクラウドサービスのバージョン管理サービスへの移行も検討していますが、 現時点ではクラウド型サービスはまだ利用せず、サーバー設置型のバージョン管理システムを利用することにします。)

画像リソース

プログラムやWebページに配置するリソース画像はPNG, Jpeg, SVG画像が多く、容量も小さいためソースコードと合わせてバージョン管理システムに投入するのがよさそうです。

画像リソース (制作コンテンツの元データ)

画像リソースを作成するための元データファイルです。多くの場合、Adobe Illiustrator (*.ai)形式、Adobe Photoshop (*.psd)形式が多いです。
ファイルサイズも大きく、ファイル数も多いため、ファイルサーバーやNASに格納するのがよさそうです。 しかし、将来10Gbps回線の普及を見据えてクラウドストレージに保存するのも方針としてはありかもしれません。
また、別の方法としてバージョン管理システムに投入する管理方法もあるかと思います。

ここは、どのように管理するのが良いか検討しており、一番の悩みどころです。

画像リソース (参考資料)

参考用の画像リソースは重要度が低いため、ファイルサーバーの配置で良さそうです。

動画コンテンツ

各種動画コンテンツです。 テレビなどで再生して楽しむ動画コンテンツの場合は、DLNA等の規格に対応している必要がありますので、NASまたは録画レコーダー等への格納が良いと考えられます。
コンテンツ用の動画やコンテンツ制作素材の動画の場合は、ファイルサイズがかなり大きいため、現状はクラウドストレージに配置よりは NAS、ファイルサーバーへの配置が良いかと思われます。

写真コンテンツ

写真撮影したデータです。日常生活の撮影写真を保存するのであれば、クラウドストレージへの保存でよいかと考えられます。
一方でコンテンツ制作用に写真撮影したデータの場合、同じような写真が複数あることや、Raw形式のデータもあるため、ファイル数や容量を考慮すると、 現状はクラウドストレージへの保存よりは、NAS、ファイルサーバーでの格納のほうが良さそうです。

メディア(音楽)

音楽データは、DLNA機器での再生などに対応している必要がありますので、専用のメディアサーバーやNASへの配置がよさそうです。

ポータル (イントラネット)

イントラネットのポータルをどうするかは悩みどころですが、支障がなければ、Microsoft SharePoint や Google Site へ移行するのも選択肢としてありかと思われます。
ただし、従来のイントラネットポータルでできていたことができなくなり、スペックダウンする可能性もあるため、十分に検討が必要です。

(iPentecではポータル運用が見通せないこともあり、イントラとクラウドの両方のバージョンを利用しています。ポータルに掲載していた情報をExcelの帳票に移し、 オンラインストレージに格納しポータルのページ数を減らす取り組みをして、クラウド化を進めています。帳票化できるものはクラウドストレージ管理で運用できていますが、 ポータルのWebページ自体は利便性と編集容易性の観点から現状では、イントラポータルのほうが優勢です。)

ソフトウェア (インストーラー ISOイメージ)

こちらは、ファイルサイズも大きく、消えてしまってもダウンロードしなおせるため、NASまたはファイルサーバー配置でよいかと思います。

よくわからない雑多なファイル

一時的な作業ファイルやよくわからない雑多なファイルは、クラウドストレージの容量節約のため、NASに配置するのが良さそうです。
ほとんど使用しないファイルが多いですが、まれに参照される可能性があるため、本来であれば整理するのが適切だと思います。

まとめ

クラウドストレージのサービスが徐々に普及してきていますが、長所と短所を理解して使い分けていくのがよさそうです。


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著者
iPentec Document 編集部
iPentec Document 編集部です。
快適な生活のための情報、価値のある体験やレビューを提供します。
作成日: 2022-01-04
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