イラストや漫画用の背景の描き方の紹介記事です。この記事では、写実の正確さより、それらしく見えるものを手早く簡単に書く方法を紹介します。
クオリティ ∝ 描画時間
時間をかければリアルで緻密な背景が書けます。逆に言えば、リアルで見ごたえのある背景は時間をかける必要があるということです。背景を描くために割く時間と求めるクオリティのバランスを取ることが重要になってきます。
先に述べたようにクオリティは時間に比例しますが、なるべく低コストでクオリティーの高い背景を作成したいです。描画のコストを下げつつリアリティのある背景を描くためのポイントを紹介します。
ロケーションハンティングをして、背景や漫画やイラストの舞台や環境、場所をしっかり調べます。後述しますが、風景や背景に登場する要素をすべてデザインするのは難しく、時間もかかります。ロケーション・ハンティングでどれだけ情報を集められるかが勝負です。
風景といっても、街中の場合は、ビル、街灯、歩道、車道、塀、街路樹、坂、生垣など様々な要素が登場します。これらすべてを想像でデザインするのは非常に時間のかかる作業です。また、デザインしてもリアリティのある背景にならない可能性もあります。実際の風景や景色をモデルとしてアレンジしたほうが効率も完成度も高まります。
SFなどの現実にない背景を描く場合でも、元となる場所を用意したほうが良いです。先にも述べたとおり、すべてを想像でデザインするのは難しいためです。
有名な作品でも多くの場合モデルとなった都市や環境があります。
主人公がたどりついた海沿いの町 ⇒ ドゥブロニク (モンテネグロ)
中世風の街並みや砦 ⇒ クエンカ (スペイン)
近未来学園都市 ⇒ 立川、多摩センターなど
火星に人類が植民し住むコロニー ⇒ ベネツィア (イタリア)
写真集ではトレースできないなど、著作権面での利用が制限されるため、実際に訪れてロケーション・ハンティングをするのが望ましいです。
消失点が画面内に入ると消失点付近の密度が高まるため、消失点付近の線が増え、描画に時間がかかります。ここぞという場合を除いては消失点を画面内に入れないほうが描画コストを下げられます。
写真での例は以下になります。
すべてを描かずに済ます方法です。
キャラクターで隠してしまうことで背景を減らします。
キャラクターの人数を増やしたり、大きく描くことで余白を減らします。背景を描く分量を減らせます。
横長、縦長のコマを用いて描く量を減らします。
背景全体を描くと時間がかかりますが、特徴的なオブジェクトをコマに描くことで状況を説明できます。
実際に背景を描いてみます。
描く背景を決めます。今回は下図の写真を用います。
今回はトレースで描いてしまいます。写真を画像編集ソフト(今回はPhotoshop)にレイヤーとして貼り付けます。
トレースしやすいように透明度を下げます。
写真を参考にしてトレースします。すべての輪郭を取り出すと時間がかかりすぎるため、遠くは特徴的な線だけを描きます。
トレースができたら写真を非表示にします。
トーン処理します。暗いところは思い切って暗くしてしまいます。
写真にはない汚れや壁のひび割れなどを書き足します。これで完成とします。
書き込みを増やした場合の例です。漫画やイラストの雰囲気に合わせて書き込みの度合いを調節します。