情報が少ない博士後期課程(D)の就職活動(企業)のメモです。
とある有名な絵本では、100人博士がいると、12人が無職で、8人が行方不明になってしまうということで、世間では、博士後期課程の就職活動は厳しいといわれております 。
今回、実際に人柱になって、企業への就職活動をしてみました。(公募は同期のほかの人が人柱になってくれるのではと期待)
ちなみに理系(専攻分野は:情報・ソフトウェア)です。
就職先は某メーカー研究所(応用系)に決まりました(まぁ満足?)が、あまり上手な就職活動ではなかったと思います。うまく就職活動ができるようにいくつか重要なポイントをまとめておきます。
自由応募でふつうにエントリーすると、会社によっては確実に落ちます。必ず人事部あてにメールを送って、博士課程はどういう選考手順を踏むのか、推薦はあるのか、見学はできるのか、問い合わせたほうが良いです。大きな会社ならば、(あれば)特殊な選考ルートや見学会やリクルーターの連絡先を詳しく教えてくれます。(ウェブサイトには「書類を送ってね」と書いてあるにもかかわらず、実際は見学会に参加して、社員の方とお話して、気に入ったらその上で、エントリーシート郵送といったパターンもあるので注意)
と、よく言われますが、学科ごとの「推薦枠を利用する」推薦は使えません。が「推薦枠とは無関係の」推薦は会社によっては存在します。先によく問い合わせをして情報を集めておくと良いでしょう。 博士課程の学生は選考参加時点で、無条件で推薦扱いになる会社もあります。
いろいろ見させてもらったり、話を聞いたりしたほうが良いです。とくに研究所関係は謎だらけなので、一般の会社説明会ではわかりません。研究所の見学会には、見学させてもらえるならば行っ たほうが良いでしょう。研究所の体質が、基礎研究志向なのか、応用研究志向なのか、あるいは開発と研究の割合がどの程度なのか直接研究員の方から聞くことができます。このときに、どうやって選考に参加すればよいかも教えてくれます。
採用の方向に傾くと、会社側は速やかに縛りをかけてきます(推薦状出してください、2週間で返事をくださいなど)。行きたい会社の候補が複数ある場合には、同時に選考を進める必要があります。 (私は、適当に受けていったので、えらいことになってしまいました。)
推薦状を出してから内々定がくるので、(自由応募の選考を受けない限り)複数の内々定をもらうことは、あまり無いと思われます。
企業の採用(電気・情報系)はゴールデンウィーク後からばたばたと決まっていくようですが、公募は8月からですので時期がだいぶ違います。ふつうは、「秋以降の採用に応募してね」と言われてしまいますが、会社によっては考慮してくれる(待ってくれる)ところもあるようです。会社によってスタンスは大きく違うようです。
諸事情(公募との併願、もっとあちこちの企業を見学するなど)により、選考への参加時期がずれてしまう場合、中途・キャリア採用で応募しても大丈夫という会社もありました。
見学は2月とか3月の早いうちに見ておいたほうが良いでしょう。研究所は通年で見学できるところもあります。選考には関係ない見学が開かれるならば、あちこち見てみるのが良いと思われます。研究所のオープン展示会 や、一般のビジネスショーなども行ってみたらよいと思います。(マッチング選考を兼ねる見学会では様子見のつもりで見学したにもかかわらず、あれよあれよという間に採用が決定して縛りがかかってしまう場合があります。)
まったく違った分野は厳しいと思われますが、ある程度関連があれば採用してくれるようです。この辺の基準も会社によってだいぶ違うようです。そもそも、大学での研究とまったく同じ研究をしている会社なんてあるんでしょうか…(学会でよく知っている人のところならば、だいたい同じですが)
多くの会社では、博士後期課程の学生の場合には、指導教員の同意が必要です。リクルーターを通して選考に参加する場合、最初に聞かれます。最後に提出する推薦状は先生に書いてもらいました。
私は使いませんでしたが、希望の会社に行けるのなら、使ったほうがいいと思われます(楽だし)。その代り、上司と喧嘩しないでよね、と先生に言われますが。
博士課程の学生の場合、面接・見学会は時間が長くなるようです。
見学会 1(自分)対3で 2時間 研究所の説明、デモ、その他雑談
技術者や研究者の方と面接をすると「学位は取れそうですか?」などと聞かれます。卒業が確定していませんでしたので、論文投稿状況や、卒業に必要な論文の本数を説明しました。
下3つの順番は状況によって変わりますが、これらの理由を考えておきました。 特にいちばん上の項目は、相手が納得する説明ができるように考えておきました。
技術的な話はあまりなく、雑談ばかりでした。研究チームの規模とか、プロジェクトの進め方とか…他にどこを見学したかとか、キャリアパスの話とか…いろいろでした。
決まるときは、すごい速さで決まるようです:見学会申し込み ─(5日)→見学会─(8日)→面接 (OK)
(B社の) 最終選考の待合室にいた学生の半分が博士課程の学生でした。半分も博士課程の学生がいるなんて!
内定式というやつに行ってきました。座った座席の左隣の人も右隣の人もDでした。どうやら、博士課程隔離席だったようです。
6X0人も採用しているのに博士課程の学生は1X人しかいないようです 。後で聞いた話では、どの会社も採用人数はそんな程度だそうです。
問題は就職後です
入社当初の給料では、新任助教には及びません。(新任助教は32~37万円程度?)。 しかし、企業では職種によって残業代がつきますので、残業が多くなれば追いつきます。月20時間程度の残業で、ほぼ同等、 40時間も残業をすれば、新任助教の給料を上回る感じです。(毎日、朝8:30~夜7:30まで働くと残業が月40時間くらいになります)
ただし不景気になると残業は厳しく制限されるため残業で収入を上げようと考えないほうが良いです。
一般的なメーカ企業のため、労働組合がありますので最低金額は担保されます。ボーナスは4か月以上は保障されます。
研究員です。先進システムの研究をしました。
いつのまにか、研究者ではなくて、研究させる側になってしまいました。(研究テーマを設定して、研究者にお金を出して、結果にああだこうだと突っ込む)。
これはこれで、重要な仕事かもしれません。それ以外の仕事についても、周りの人たちとはかなり違う仕事となります。
ビジネスサイドの仕事の割合が増え、Product Owner(開発)のポジションになりました。製品開発計画や設計、デザイン、製品に必要な調査研究等を実施します。
自分で手を動かすことはなく。発注内容と費用の割り振りを決める作業が多いです。経営層に説明してお金を確保するプレゼンなどもあり。
プレゼンテーションができると、純粋な技術の仕事ではなく、ビジネスサイドと絡んだ仕事が増えてきます。
発注内容や出来上がる製品イメージ、今後の(夢のような)計画のPower Pointのスライドづくりがほとんどです。(出来上がったもののレビューもします。)
Product Owner(開発)なポジションは変わりませんが、扱う製品が増えたり、新しいプロダクトを担当したりなどです。
理系なので、設計開発寄りのポジションです。販売戦略まではタッチしません。
Power Pointのスライドづくり、出来上がったもののレビューをします。やっている内容は変わらないですが、だんだん態度がでかくなっています。
収入レベルは以下の表の状況です。
教員のポジションに就いて順調にキャリアアップした場合と収入面での違いはあまりない印象です。
むしろ、科研費を獲得できれば、好き勝手いろいろ研究できるので、教員もいいよなーと思うのでした。
勤続年数 | 収入レベル |
---|---|
1-5年 | 助教程度 |
6年 | 助教よりちょい超え |
7年- | 准教授程度 |
博士課程の意味はあったのかですが、10年ほど経験して次のメリットはありそうです。
名刺に "博士(学術)" または "博士(工学)" と書けるメリットはそこそこあります。なかなか名刺に書ける資格は無いため結構なメリットです。
名刺交換の際の話題にも困りません。
企業では論文投稿しない限りは長文を書くことはほとんどないため、論文を書くスキルは直接役立つ印象はないですが、
スライド作成、申請等の帳票で短文を書く機会はかなりあります。
せっせと論文を量産した経験とスキルから、すぐに文を書き始められますので、帳票やスライドづくりはスムーズに進められると思います。
作成したスライドを説明する機会はとても多いため、スライドづくりやプレゼンテーションのスキルは役に立ちます。
的確にわかりやすく説明することが基本ですが、いろいろ経験して、最終ゴールはプレゼンテーションを聞いて安心感を与えられることが重要だと思います。
よく言われますが、自分ではわからないです。
大学等へ転職する方も結構います。5人以上大学に転職しています。うまいことやったなーと思います。